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【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜

第30章 Final Stage Ⅲ 〜宿命の斬光、桜は血に咲く〜







「ああ、ならば聞くが福沢‥‥国家とは何だ?」

その問いに、福沢は再び沈黙する。
口を開こうとするが、声が出ない。
福地は代わって語り出す。

「‥‥」

「欧州の政治学者M・ヴェーバーが『暴君の独占』という概念を提唱した。その中で『国家』とは『正当な物理的暴力行使の独占を実効的に要求する人間共同体』と定義される」

「国家とは『暴力』?」

「そうだ。大雑把に言えば国家とは『暴力の権利を持つもの』だ‥分かりやすいのは軍事統帥権だな、軍を動員する権利を持つが『国家』だ。他にも警察や警備−−−つまり『必要な暴力』は悉く国が認可する。お前達探偵社も国から許可証を受けて、銃を携行しておるだろう?」

「む‥‥」

「中世−−−近代国家成立以前には領主や藩主が許可なく武装し、戦争を起こせた。定義からいえばこの頃は領主や藩主が『国家』と言える。さて、以上より国家を廃する為に必要な『それ』が導き出される。分かるか?」

「『大指令』!」

福沢がようやく声を発する。

「その通り、人類軍の総帥が『大指令』を使用すれば各国は軍権、即ち国家主権の根幹を喪失する。自分で軍を動かせるのだからな、すべての軍事力が人類軍麾下となれば戦争は起こらん、右手と左手で喧嘩するようなものだからな」

「‥‥その為の今回のテロ計画か」

福沢の声には、もはや怒りも迷いもない。
ただ、哀しみと深い理解があった。
すべては人類軍と『大指令』を手にする為、その為に巨大テロで世界を揺さぶり各国首脳を動かした。
福地は戦場に赴き、そして戦争を憎んだ。
だから戦争を無くす計画を行ったのだ。

「今後世界は人類軍総帥を頂点とした超国家『人類連邦』を樹立する」

福地の声は、どこまでも静かだった。
だがその言葉の一つひとつが、福沢の胸に重く突き刺さる。

「通貨・税制・法律を統一し、移住・移民を促進させて皆を『われら』にする。そこまでお膳立てが揃えば『頁』が効く」

福地の目が遠くを見つめる。
すでに彼の視線は、現実ではなく未来に向いていた。




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