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【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜

第30章 Final Stage Ⅲ 〜宿命の斬光、桜は血に咲く〜







「僕は彼らが必死に探してる『何か』を、代わりに眺めて笑うだけで十分さ!」

ディアナは小さく目を伏せて、月を見上げるゴーゴリの横顔を盗み見る。

(‥‥私は家族を求めていた。でも、それは本当に私が求めているものなのかな?)

段々分からなくなってしまった。
小さかった頃は、ただ隣にいてくれる誰かが欲しかった。
夜が怖くて泣きながら眠った日も、声をかけてくれる大人の手を想像して、胸の奥を必死に埋めていた。
でも大きくなるにつれて、夢で見たその手はだんだん形を失っていった。
フョードルの背中を追いかけるほどに、何を追いかけているのか分からなくなっていった。
家族が欲しかったはずなのに。
それが本当に『家族』なのか、『居場所』なのか、それともただの『承認』なのか−−−考えれば考えるほど分からなくなった。

(ねえ、ダディ)

声には出さない問いを、ディアナは空に向けてそっと投げる。

(貴方が私にくれたものは、家族だったの?それともただの鎖だったの?)

自分の指先をじっと見つめると、幼い頃に握った誰かの手の感触を思い出しそうになる。
けれど、その輪郭はもう掴めない。

(分からなくてもいい。分からなくても……)

ディアナは小さく笑った。
声に出ないまま、喉の奥でその笑いはすぐに溶けて消えた。

(せめて今だけは、私の手で答えを決める。それだけは、もう誰にも奪わせない)

ゆっくりと目を閉じて、ディアナは息を整えた。




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