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【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜

第29章 Final Stage Ⅱ 信義にそむく遊戯







「ゲーム開始からもう五分だよ、動かないのかい?」

ゴーゴリがステッキを肩に担いで、廊下の壁にもたれながら、わざとらしく片足を壁に当ててカツンと音を鳴らす。
フョードルはわずかに首を傾けると、目だけを横に動かしてゴーゴリを見やった。

「細工は流々‥‥という訳だね」

フョードルは口の端をかすかに上げ、顎を少しだけ下げると、足元のタイルを軽く爪先で擦るように踏んだ。

「さっすがダディ!」

ゴーゴリが楽しそうに手を叩き、ステッキをくるりと回して宙に放り投げる。
空中で一回転したステッキを背中越しに器用にキャッチし、ディアナの肩をぽん、と叩いた。
その時、遠くの廊下の奥から、無線の混線音に混じって、ダダダダッと複数のブーツの音が近づいてくる。

「おわっと怖!じゃあ私達はこれで!」

ゴーゴリはディアナの手首を取って、片方の手で外套の裾を大げさに振り上げる。
外套が空気を切って回転すると、その布地が風を孕んで二人の姿を包み込んだ。

「頑張ってねー!ダディ!」

ディアナはくすくすと笑って、フョードルに向けて軽く指先を振る。
一瞬、フョードルの前に黒い渦のように外套が翻り、ひらりと空気を裂く音がした。
次の瞬間、二人の姿は何事もなかったかのようにその場からかき消えた。
ゴーゴリとディアナが消えたのと同時に重武装した警備兵が中に入って来る。

「両手を挙げろ、抵抗すれば射殺する」

フョードルは言う通りに両手を挙げる。
拘束されると思いきや、横から警備兵が頭を撃ち抜かれた。

「何!?」

警備兵達は驚いているうちに次々と殺される。
そして、警備兵を殺した人がフョードルの目の前に現れた。
その人物は吸血種化した中原中也だった。




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