【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第29章 Final Stage Ⅱ 信義にそむく遊戯
「純愛だね〜〜」
ディアナは口元を指で隠し、くすくすと笑う。
「いや、どこが!?愛があったとしても狂愛だろう!」
シグマは片手を突き出してディアナにツッコミを入れるように言い返す。
「親友を救いたいと願うこの情動は実に揺るがし難い!故に不退転の意思でそれを打破する。それこそらヒト種の自由意志の証明!」
ゴーゴリは手を広げ、ステッキを掲げたまま宙を見上げて高らかに言う。
「‥‥君、善い友達持ってるねぇ」
そう言う太宰に対して、フョードルは黙り込む。
「‥‥」
ゴーゴリはステッキをくるりと回し、フョードルに向かって突きつけた。
「だが!だがだが!ここで哲学的難問が一つ!単に私がドス君を殺しても、それは『自由意志を証明したがる己の本能』の発露過ぎず、動物的感情の証明でしかないのではないか!?この問いに脳が千切れる程、煩悶した末、遂に一つの結論に辿り着いた!」
ゴーゴリはステッキを高く掲げ、空を仰いで狂気の笑みを浮かべる。
「『親友たるドス君の救出』と『ドス君への殺意』を同時に満たす。その妙策を得たのだ!」
「君達二人に今から脱獄決闘をして貰う」
改めて太宰がフョードルに言う。
「‥‥君、本当に善い友達を持っているねぇ」
「でしょう?」