【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第28章 Final Stage Ⅰ 〜空港バトル!東雲姉妹VS条野〜
「敦、重要な会議だぞ。涙ぐんでいる場合か」
書類を整えながら国木田が苦言を呈する。
「国木田さんは冷静ですね」
「2時間程泣いた後だからな」
淡々としながらも目元が赤い国木田に、敦は苦笑する。
「こちらに向かず聞いて、気配の数が多い。侵入者が居る」
小声で隣から響いたのは鏡花の声。
視線を逸らさず、警戒心に満ちた声音だった。
次の瞬間、夜叉白雪の刃が机に音を立てて突き刺さる。
鋭い金属音が沈黙を裂いた。
「!!」
「谷崎さん!?賢治君!?無事だったんですね!」
「いや‥‥うん、まぁ‥‥久々の再会だから驚かそうと思って隠れてたんだけど‥‥」
谷崎が頬をかきながら笑うも、鏡花の目線が冷たい。
「だから言ったのだ阿呆。余興で死ぬ気か」
国木田の言葉には苛立ちと呆れが混じっている。
「マフィアが用意してくれた隠れ家の廃村に連絡係が来たんです。その人が『状況が変わった。探偵社と合流するように』って」
「連絡係?」
「一番意外な人だよ」
「マフィアの首領が自ら!?」
敦の驚きに皆が静かにうなずく。
「敵の裏をかく為に相当な無茶をしたようだな、恐らくマフィア内部は悲惨なことになっている。何しろ『吸血種』の初期発生源だからな、探偵社の作戦はマフィアの為にも必要と考えたんだろう」
福沢が机に両手をつき、重く言葉を落とす。
「そんなに重要な作戦なんですね」
「ああ、誇張じゃなく、世界の命運が掛かっている」
国木田の表情は硬く、冗談の余地はない。
「ではこれより、探偵社全体会議を始める。先ずは現状の確認からだ。乱歩」
「はーい」
手を挙げた乱歩は椅子を回しながら軽やかに声を出すが、その顔には笑みがなかった。
「知っての通り現状は滅茶苦茶。敵はやりたい放題だ。敵である『天人五衰』‥‥『魔人』ドストエフスキー、『道化師』ゴーゴリ、『支配人』シグマ、『不死公主』ブラム・ストーカー、そして『神威』福地桜痴。彼等の計画は遂に最終段階に入った。彼等は感染性の『吸血種』を世界にばら撒き、既に十六の国軍を陥落させた」