【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第28章 Final Stage Ⅰ 〜空港バトル!東雲姉妹VS条野〜
「此処は‥‥探偵社の事務所!?どうして‥‥」
敦は目を見開き、周囲を見渡す。
懐かしい木の匂い、机の配置、埃っぽさまでが記憶そのままで、思わず足が止まる。
「驚く気持ちは分かる」
国木田が腕を組んで壁にもたれながら、落ち着いた声で言った。
「国木田さん!これは一体何です?探偵社屋は軍警が封鎖してる筈です!入れる訳が‥‥」
「窓の外を見てみろ」
声を荒げる敦に対し、国木田はゆっくりと顎をしゃくった。
敦は促されるままにカーテンを払い、窓の外に目をやる。
だがそこにあるのは、風景とは呼べぬ虚無だった。
「何もない‥‥空も地面も一面の砂嵐だ」
喉の奥が渇くようなざわめきを覚えながら、呟く。
「本物ないからな、この探偵社は偽物。会議をする為にポオ君に創らせた空間小説だ」
「会議って?」
「決まってるだろ?敵との決戦、それに勝ち探偵社を救う為の最終作戦会議だ」
国木田は当たり前のように淡々と話す。
語気に込められた重みが、敦の胸を打つ。
「!!」
バタンと隣の扉が勢いよく開き、香織が現れる。
その姿に敦の顔が一瞬で明るくなった。
「如月さん!無事だったんですね!!」
駆け寄ろうとした足が止まる。
「うん、まぁ、大変な目にあったけど」
香織は苦笑を浮かべながら、肩を竦めた。
その笑顔の裏に何か言えないものがあることを、敦はすぐに察した。
「……何があったんですか?」
そう聞こうとした瞬間、別の気配が部屋に差し込む。
「座れ」
短く、一切の感情を込めない命令。
「社長!」
福沢の姿を見て、敦の背筋が自然と伸びた。
遂に探偵社の力が結集される時が来たのだ。