【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第27章 𝕃𝕠𝕤𝕥 𝕋𝕚𝕞𝕖 〜刹那の奇跡と儚い懐慕〜
「その眼を見る限り、異能が使えたのだね」
「使えないとは一言も言ってない、治君にとっては嬉しい誤算だろうけど」
「何故止めた?」
微かに怒りを露わにして太宰が問う。
「死んでほしく無かったから……ただそれだけだよ」
「治君と会うことが無かったら私は教会で日々を過ごしていた。でも治君に出会ってから楽しかったよ、街に連れて行ってクレープを食べたり、私に誕生日プレゼントを贈ってくれたり、その他にもいっぱい。私、治君がいないとダメみたい」
「いつから私の計画を知っていたのだい?」
「初めて会ってからしばらく経った頃かな……あっ、はぐらかそうとしても全部知ってるからね」
念押しにアナザー香織が太宰に言っている時、別の方向から声が二人の耳に届く。
「あ、いたいた〜」
香織は二人に駆け寄り、太宰に関しては豆鉄砲食らった顔をしている。
「香織!?何故君がこの世界に!」
「やっぱり、私が知っている太宰君だ」
「え、どういうこと?」
「おかしいと思わなかった?死ぬ運命だった友人をこの世界では生きている。友人を死なせないためには死ぬ原因を無くすしかない。そのためには起きる事件や出来事を把握しないといけない。つまり、目の前にいる太宰君は私の世界にいる太宰君ってこと、その証拠に私の姿を見て驚いているし」
「ほへ〜〜」
香織の推測にアナザー香織はアホっぽく返事をする。
「で、太宰君がここにいるってことは死亡ルートは回避したんだね」
二人の会話を聞いていた太宰が納得した。
「なるほど、私の計画を邪魔したのは二人ということか……」
「香織」
アナザー香織と香織が太宰に視線を向ける。