• テキストサイズ

【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜

第27章 𝕃𝕠𝕤𝕥 𝕋𝕚𝕞𝕖 〜刹那の奇跡と儚い懐慕〜







アナザー香織は必死に屋上に続く階段を駆け上る。
走ったせいで過呼吸になっても、久しぶりに走って明日筋肉痛になるかもしれないと思っても、アナザー香織は走る足を止めなかった。

(治君を死なせない!絶対に止めてやる!!あんな未来にさせてたまるか!!)

会ったことがない太宰の友人と太宰が笑い合って話せる未来だってある筈だ。
頭の切れる太宰を説得するのは簡単じゃない。

(今すぐにでも投げ出せればどれほどいいか)

しかし、アナザー香織は大切な人を死なせたくない。
屋上の扉が見えて、勢いよく扉を開ける。

「治君!!」

「香織‥‥」

想定外だったのか太宰はアナザー香織の登場に息を呑む。

「置いていかないでよ!!私を一人にしないでよ!なんで何も言わずに消えようとするの!こんな展開誰も望んでない!!」

太宰はアナザー香織の言葉を聞きながら、何処か遠い目で見つめていた。

(やめて、そんな目で私を見ないでよ)

「済まないね」

お別れの言葉としては何の飾り気のない一言だった。
太宰の身体が縁を越え、重力に引かれて落ちていく。

「治くーーん!!」

「如月さん!!駄目です!」

アナザー香織は敦の止める声を無視して身を投げ出した。

(治君を死なせない!お願いだから上手く発動して!)

地面に着くまでは約数十秒。
アナザー香織は落ちる太宰に向けて手をかざす。

(力を貸してください、お母さん)



『いいでしょう。その想い、承りました』



小さな鈴を転がすように、母のものとは違う美しくて儚げな声が脳内に響く。
桃色の瞳が青く澄んだ瞳になり、瞬時に浮かんだ単語を唱える。

「サンクチュアリ・ザ・ワールド」

視界が暗くなったと思いきや、地面に足が付く感覚を感じる。
近くには太宰が立ちすくんでいるのが確認でくるため二人共ぺしゃんこにならずに済んだ。





/ 309ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp