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【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜

第27章 𝕃𝕠𝕤𝕥 𝕋𝕚𝕞𝕖 〜刹那の奇跡と儚い懐慕〜





「えーと、何だっけ……そうだ、芥川って人」

「芥川君が!?」

この世界の芥川はマフィアの人間ではないのだ。
あの芥川が人助けしている姿が結び付かない。

「うん、屋上で敦君と戦っていたし」

「この世界でも二人は戦うんだね」

「そっちの世界はどうなの?」

「芥川君はマフィアの遊撃隊の隊長で、敦君は武装探偵社---私の後輩なんだ」

「え、逆なんだけど」

「逆ってことは敦君がマフィアの人間ってこと?想像つかない」

芥川と同様、敦が人を殺すイメージが湧かない。
香織は優しい敦が人を殺せるのだろうかと疑問に思う。

「芥川君がマフィアを襲撃したのは、妹を取り戻すためなんだって、しかも今日が妹さんの処刑日。怒るのも無理ないよね」

細かく未来の様子を見たようでアナザー香織はすらすらと言う。
話を聞いていた香織は太宰の意図を感じる。

「それって、太宰君が芥川君を誘き寄せてるんじゃ---」

「その通り、この襲撃も太宰君の計画の内、ほんとすごいよね」

「……」

(友人のためなら犠牲を厭わない太宰君に私達は説得しに行くんだ)

香織は気を引き締めるかのようにぎゅっと拳に力を入れる。
そんな香織とは裏腹に、アナザー香織が足を止めた。

「止まって」

アナザー香織が緊張した様子で先を見ている。
香織も彼女の視線を辿って前を見ると一人の男性が香織達の行く道を遮るかのように立っている。

「よぅ、香織。手前は太宰に部屋から一歩も出るなと命じられていた筈だが?影武者を連れて何処に行くつもりだ?」

「そこを退いて、中也君。私は治君に会わないといけない」

「俺が素直に行かせると思うか?」

中也がアナザー香織を睨みつけるが香織はアナザー香織が中也に見えないように彼女の前に出る。




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