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【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜

第27章 𝕃𝕠𝕤𝕥 𝕋𝕚𝕞𝕖 〜刹那の奇跡と儚い懐慕〜






「『亜鬼薬事件』は起きなかった?唯斗のことは知らない?」

「なにそれ」

どうやら起きていないようだ。
更に唯斗のことを知らないときた。

(目の前にいるのは間違いなく私だ……何でこんなにずれているの?)

不安な顔をする香織をアナザー香織が聞いてくる。

「逆にあなたのところはどうなの?」

「私は武装探偵社ってところにいて、困っている人を助けて過ごしてたかな」

「武装探偵社?……もしかしてあなた、こことは違う別世界から来たんじゃない?」

話を聞いて分かったがここは香織が知っているヨコハマじゃない。
いわゆるパラレルワールドの世界に香織は来てしまったのだろう。

「そんな!!今すぐにでも元の世界に戻らないといけないのに!」

「焦っているように見えるけど何かあったの?」

「武装探偵社のみんながテロリストにされてるの、勿論そんなことをする人達じゃない。誰かに嵌められて、私は一刻も早く無実を証明しないと!帰る方法を知らない?」

「……残念だけど私は知らない、でも治君なら知ってるかも」

「それじゃあ、太宰君に会えば!!」

「会うのは無理、私でさえ会うのが難しい。最上階にいるけどそこまで辿り着くには厳重な警備を突破しないといけない」

マフィアの首領と会うには上級構成員や幹部などの位が高い人間。
希望が見えたと思いきや、また絶望の淵に突き落とされた。

「それに、治君は明日死ぬ、明日を逃せばもう---」

「嘘……」

信じられない、信じたくもない。

「嘘じゃない、私の予知は当たる」

アナザー香織も香織と同じ、突然脳に流れた映像を通して見たのだろう。
それは絶対に当たることに香織は身を持って知っている。

「何で!?何で太宰君が死ぬの!?あなたはそれでいいの?」

「ここは無数にある世界の一つでしかない、治君は大切な人を守るために死ぬ。それに治君が決めたことに私は口出し出来ない、彼が望んでいるのだから」

望んでるということは太宰は誰かに殺されるのではなく、自分から死ぬことになる。
それ以上に香織は彼女の言っていることに理解が追いつかない。




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