【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第4章 動き出す影
唯斗と香織が話していると別の声が聞こえてくる。
「談笑中のところすまないね、私も混ぜてくれないか?」
今、この場にはいないはずの聞き覚えがあった。
この声が聞こえてしまえば認めざる負えない。
そう、この声は‥‥
「父さん‥‥」
目線を声のした方へ向けるとそこには一番会いたかった父の姿。
「何で、何でこんなところに‥‥」
「香織、下がってて」
唯斗が香織を守るように前に出る。
「お久しぶりですね、柳瀬和雄さん−−いや、柳瀬医師と言ったほうがいいのかな?」
「医師と呼ばれるのは何年振りだろうな、君はちっとも変わらない」
和雄と唯斗には何か関係あるのか?
しかし、今はずっと聞きたかったことを和雄に聞いてみたい。
「父さん、亜鬼薬を作っているって本当?Errorを生み出しているのは父さんなの?」
心の底で否定してほしい。
いつものように優しい眼差しで否定してほしい。
でも、現実はどこまでも残酷だった。
「嗚呼、知ってしまったのか。何も知らずに生きていれば都合がいいものを」
「え‥‥?」
否定せずに肯定した和雄に香織は戸惑う。