【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第26章 猟犬との逃走劇の末
探偵社から離れた香織はホテルに身を隠すことにした。
友人を頼って巻き込ませるわけにもいかず、消去法でホテルにしたのだ。
捕まらないためにも部屋から一歩も外に出ずに食事はルームサービスで済ました。
(昨日のことが今日のように思える)
いつになったら動けるのだろうか。
早く無実の証拠を掴みたい香織は焦りでいっぱいだ。
(みんなに電話しても誰も出ないし。無事だといいな)
一日しか経っていないのに多くのニュース番組で取り上げられ、世間は完全に探偵社をテロリストと認識されている。
付けているテレビからニュースが流れている。
『次のニュースです。テロ組織『武装探偵社』の一部メンバーが未だ見つからず、警察は情報提供を求めています』
画面に社員の指名手配の顔写真が映し出される。
表示された写真を見て、香織は驚いた。
「何で……ないの……」
「私の写真がない!?」
軍警側に情報制限されて香織の写真がないのか、はたまた公開出来ない情報なのか。
正直、何が起きているのか分からない。
「それは貴女が『保護』対象だからです」
聞き覚えのある声と共に背後から気配を感じる。
この部屋には香織以外誰もいないはずだ。
入るためにはドアか窓しかない。
しかし窓の鍵は閉まっている。
(ドアが開かれる音が聞こえなかった!)
香織は振り返って、距離を取りながらも警戒態勢になる。
「じょ、う、の君?」
なんと香織の背後に現れたのは条野だった。
これには香織もビックリした。
(真逆、『猟犬』が動いてる!?)
軍警だけではなく、猟犬も動いているとなれば探偵社は政府と猟犬を相手することになる。