【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第25章 悲劇なる日曜日
外で聞き込みをしていると着信音が聞こえる。
敦はポケットに入れているガラケーを取り出して通話ボタンを押す。
「はい」
『特務課の坂口です。太宰君と連絡が取れないのですが居所をご存じありませんか?』
「いえ‥‥」
『では、社の皆さんに伝えて下さい。連続殺人の被害者ですが当日の護衛人員や予定内容が政府関係者の手で改竄操作されていた形跡がありました』
「え!?ってことは政府の中に犯人の一味が?」
『或いは‥‥これ程徹底調査しても何も出ない点からして『天人五衰』とは何らかの政府機関の裏の顔なのかもしれません。兎に角注意を」
安吾との電話が終わったところで目の前からメガネを掛けた男性が現れる。
「やぁ」
友人に会うような感じで気軽に男性は敦に笑みを向ける。
敦は男性の顔に見覚えがあった。
「貴方は確か−−司法省の」
「君は探偵社の新人だね、日曜日にまで操作ご苦労。『天人五衰』の捜査進捗はどうだい?」
「要人誘拐が可能な危険異能者を一覧の順に洗ってますが未だ何も」
「電話の相手は?」
「これは特務−−」
敦が誰かと電話しているのを見ていたようで、電話相手を聞いてくる。
何気ない質問だがそんなに親しいわけでも無いのに何故聞いてくるのか、違和感を感じる。
「あ、いえ、これは、その、僕は呼出音を聞くのが趣味で、その、あはは‥‥先生こそ、ここで何を?」
「何、そこで休憩がてら珈琲を嗜んでいる時に君を見てね。探偵社の捜査状況はどうだろうかと」
敦は虎の嗅覚を使って男性の匂いを嗅ぐ。
彼の言っていることが本当ならば珈琲の匂いがするはずだが珈琲の匂いがしない。
つまり、これは嘘をついていることになる。
「何かね?」
「いえ、特に何も!では僕何か避役カメレオンの餌やりとかあったりなので失礼します!」
ボロを出す前にここから去ったほうがいいと思った敦は適当な理由を言って、走って立ち去る。
「‥‥まぁいい、『探偵社は今日滅ぶ』運命は既に決定済みだ」