【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第23章 魔法使いの生還
「放せよ」
美鈴に掴まれた腕を中也は力強く振りほどく。
「俺は美鈴の治癒異能を目当てに現れてマフィアに勧誘したんだぞ‥‥何でそんな奴に忠誠心を捧げられる?」
「それでもあの日、救われたんですよ。生きることを諦めかけた私にご主人が話しかけてくれたことに」
「あれは−−」
「私をカフェに連れて行ったのもお化けが怖かった私を寝るまで傍にいてくれたことも全部、治癒異能のためだったのですか?」
「‥‥そうだ」
中也の言葉に美鈴はきっぱりと否定する。
「私に嘘は通用しませんよ、ご主人はそんなに器用なことが出来る人間ではありません。私、ご主人のことなら何でも答えられる気がします!」
「手前は俺のストーカーかよ!」
中也は思わずツッコミを入れてしまった。
すると美鈴はわざとっぽく涙目になりながら反論する。
「ひっどいです!!ご主人!!私がご主人に対する想いは純愛です!」
「純愛なら寝込みを襲ってきた女の構成員に呪いの言葉を吐きながら首絞めて瀕死にさせねぇだろ普通!!」
「よくそんな小さなことを覚えていますね!あれはご主人の童貞を守ろうと必死になっていましたので殺さないように頑張ったんですよ!」
これに対して中也は心の底からドン引きした。
いつから美鈴はこうなってしまったのだろうと彼は思っているはずだ。
「はぁ!?」
ピリピリとした空気から謎のコントが始まる。
いつもの通常運転に戻ったと思った美鈴はクスリと笑う。
「さっきは首領にああ言ってしまいましたが準幹部の私が胴体とオサラバされることはなりません、安心してください」
「首領は寛大な心を持っているからな」
「首領の器は寛大ではないと組織は成り立ちませんからね〜」
他人事のように言う美鈴に中也はため息するのであった。