【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第4章 動き出す影
「もうすぐ時間のはずだけど‥‥」
スマホに表示される時間を横目でちらりと見た後、目の前の景色を見る。
真っ暗な空間には一つも明かりがない。
「俺達の動きに勘付いて逃げたか、元々取り引き自体がデマだってことかもな」
中也が憶測を語ると、香織がじーと中也を見る。
勘付いて逃げたのなら先程の太宰と中也の喧嘩な気がすると思ったからだ。
「言っとくが手前もそれなりに声がでかかったからな」
「あーあ、中也のせいで敵が逃げちゃったじゃないか」
ここにいても状況は変わらないと思った太宰は帰ろうとする。
中也と香織も太宰に続いて歩き出す。
「手前も人のこと言えねえだろうが!」
(また始まった)
二人の後ろ姿を見ながら歩いていると、不意に歩いていた足元に地面がない感覚がする。
(ん?)
足元を見たのと同時に香織の身体は下に落ちて行った。
「全く、手前といると−−」
太宰が何気に後ろにいるであろう香織に目を向けると、言葉を失う。
その太宰を横目で見た中也が後ろに目を向けるとそこには誰もいなかった。