【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第22章 太宰、りんごの君を思ふ
「ふ、不法侵入だよ太宰君!」
「大地主の息子だし大丈夫でしょ」
「大地主の息子!?」
「こんなど田舎だしそんなに驚くことは無いと思うけど」
そう言いながら津島は一本のりんごの木のから2つのりんごを取ってから香織に渡す。
香織は首を横に振って、拒んだ。
「人が育てた食べ物を無断で食べれないよ!」
「いいから」
「むぐっ!?」
りんごを口に突っ込まれ自分の唾液が付いたりんごを口から出すわけにもいかず、大人しく咀嚼する。
香織が食べるのを見た津島もりんごをひと齧りする。
(……おいしい)
噛むとシャキシャキとした食感に甘い果汁が口の中を支配する。
何故か今食べているりんごがスーパーのりんごより甘く感じた。
「お姉さん、こっち向いて」
りんごを頬張っていると津島が香織の髪にりんごの花を付ける。
「やっぱりお姉さんには花が似合う」
「そうかな?ありがとう」
そんなことを話しているとゴロゴロと空から雷鳴が聞こえる。
空を見上げると晴れていた青い空が灰色に染まっている。
「雨が降りそうだね、さっきまで晴れてたのに」
呑気に言う津島とは裏腹に香織は険しい顔つきで空を見る。
(確証はない。だけどまた落雷の近くにいたら帰れるかも)
今でも何が起きているのか分からないが落雷の影響でこの場所に来たのは紛れもない事実だ。
我ながら馬鹿らしいと思う。
しかし、現時点で元の場所に帰るには落雷付近にいれば何か起きるかもしれないという予感めいたものが香織には感じた。