【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第22章 太宰、りんごの君を思ふ
「あれ、図星?お姉さん情けないね〜」
「ちょっと太宰君!!大人をからかうのは良くないよ!」
「だから僕は太宰じゃな−−もういいや」
津島が訂正しようとするがいちいち言うのも面倒くさいと思って諦めた。
「ねぇ、太宰はどんな人なの?」
「そうだなぁ……黙っていればモテそうな人で実際は自殺癖がある。ヘラヘラしてるけど頭脳明晰な人かな」
「ふーん」
「そして私と向き合おうとしてくれた。でも私はそんな太宰君から逃げたの……ほんと、嫌な女だよね」
自分に嫌悪感を抱いた香織は俯く。
しんみりとした空気が香織のお腹が鳴る音によって消される。
「お姉さん?」
「……」
津島が声を掛けるが香織は沈黙を貫き通す。
どうやら香織の腹の虫は空気を読まないようだ。
「お腹、鳴っているよ?」
「……恥ずい」
「このまま餓死でもされたら困るし食い場所に連れてってあげる」
津島に連れて来られた場所はりんご畑だった。
いかにも誰かが育てている感じのりんご畑を津島は躊躇なく足を踏み入れる。