【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第22章 太宰、りんごの君を思ふ
(タイムスリップ……私が……)
放心状態になった香織の手から新聞紙が落ちる。
呆然と立ち竦んでいると子供の声が聞こえて来る。
「お姉さん迷子?」
声に導かれて振り返ると息を呑む。
ボサボサな髪質の黒髪にワイシャツ姿をした子供が立っていた。
「だ、太宰……君?」
太宰の面影を感じた香織は混乱して首を傾げる子供に構わず、肩をガシッと掴む。
「ようやく見つけたと思ったらどうしてちっちゃくなってるの太宰君!!」
見つけたことが嬉しくて自分がタイムスリップしたことを香織は忘れていた。
「太宰?僕は津島修治なんだけど」
「津島修治?」
今度は香織が首を傾げる。
津島修治という名前は初耳だ。
名前は違うが目の前にいるのは間違いなく太宰だ。
太宰とはそれなりに長い付き合いなため香織が見間違えるわけがない。
(どうなってるの?どう見ても太宰君なんだけど)
「お姉さんの言う『太宰』って人はそんなに僕と似てるの?」
「う、うん。似てるというより同一人物に見える」
「で、お姉さんはその『太宰』を探しているうちに迷子になったわけか、大人なのに」
「なっ!!」
なんだこの生意気な子供は……
香織の中に対抗心が生まれる。
(太宰君の顔をした子供に言われるとイラッとする)
言い返したいのは山々だが本当のことを言われているため反論できない。