【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第22章 太宰、りんごの君を思ふ
(ぜ、全然見つからない!)
甘かったと香織は後悔する。
公園のベンチに座り、今後のことを考える。
(太宰君が行きそうな場所って他には何処だろう?)
中華街、河川、自殺の名所‥‥どれも足を運んでみたが太宰の太の字すらなかった。
うーんと唸っていると地面に雨模様が浮かぶ。
それと同時に冷たい雫がぽつっと鼻の頭を濡らした。
はっとして空を仰ぐと、いつの間にか雲に覆われている。
「あ‥‥」
小雨が降り出し、あっという間にどしゃぶりになる。
(天気予報は晴れだったのに!どうしよう‥‥)
折り畳み傘を持っていなく、雨宿り出来る場所を探すがそれらしきものは無い。
あたふたしているとゴロゴロと雷が鳴り始める。
稲妻がひらめいた直後、目の前の地面が黒焦げになった。
(嘘でしょ!?目の前で落雷なんて)
これは危険かもしれない。
その場から離れようとするが周囲が霞み、ぐにゃりと視界が歪んで香織は思わず目を瞑る。
(何が起きたの!?)
目眩がおさまり、瞼を持ち上げて見えたのは晴天の空だった。
あれだけ大雨が降っていたのにすぐ止むとは思えない。
晴れたのはいいがそこ見知らぬ土地だった。
「これは……新聞?」
落ちていた新聞を拾い、目を通しす。
『東奥日報 1998年(平成10年)××月××日』
「1998年?今は2013年じゃないの?」
(もしかして私、15年前にタイムスリップしちゃった!?)