【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第21章 複雑な関係と因果
「香織」
太宰の低い声が聞こえ、香織は太宰に視線を向ける。
珍しく真剣な顔をする太宰の顔が目に入る。
まるで言葉の続きが分かっていて聞きたくないと香織の言葉を遮ったように。
「君はここに居ていいのだよ、私達はただの探偵社じゃない、武装探偵社だ。簡単に殺される気はない。それに君が異能を使えたとしても私は絶対に殺さない。異能を使わなければいい話だろう?」
「でも!!暴走したら私は無差別に人を殺しちゃうかもしれないんだよ!私、そんなの嫌だ!!」
涙目になりながら香織は太宰を見つめる。
「そうなれば私が止める。君を人殺しにはさせない」
「太宰君は何で優しいの?生死を操る化け物なんかに優しくしても得るものなんて無いよ」
「香織は化け物じゃない。私が君に優しくするのは君のことが放っておけないからだ」
「やめてよ、私は太宰君に優しくされるような人間じゃない。でも嬉しかった。例えそれが同情心だとしても‥‥」
香織は柵から手を放して立ち去ろうとする。
「待ってくれ香織」
香織は泣きたい気持ちを抑え、太宰の前から走り去る。