【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第21章 複雑な関係と因果
「私と同じこと言ってたんだね、その人‥‥」
「香織に言われた時は自分がそんなことを思っていることに驚いたけど織田作に言われると気付いたんだ」
「今の太宰君があるのはその友人のお陰だね、私にはそんなのなかったな」
「香織?どうしたんだい?」
「ううん、何でも無い」
「嘘だね、共食いが終わってから様子が変だ」
香織は平然を装うが太宰には何でもお見通しのようだ。
「太宰君に隠し事は通用しないか」
苦笑いしながらも香織は空を見上げて口を開く。
「フェージャの過去を見て思ったの、私は彼とは因縁があって恨まれているのだなって‥‥当然だよね、私の存在がお母さんを殺したようなものだし」
フョードルと彩愛が恋人だったことに驚いた。
あんなに取り乱して悲しそうな表情をする彼は香織が知っている人物像と大きく違っていた。
それと同時にフョードルも一人の人間なのだと実感した。
(でも何で私は生きているのかな、殺されてもおかしくないのに……)
恋人を殺したのも同然の人間をフョードルが許すはずがない。
香織自身の思いをポツリと溢してしまったせいかどんどんと溜まりに溜まったものが言葉として口から出て来る。
「‥‥私、ここに居てもいいのかな?お母さんと同じように私の存在が探偵社のみんなや太宰君を危険にさせている可能性だってある。今はまだ異能を扱えないけどいつか扱える日が来るかもしれない。今までは異能でみんなを助けたいって思ってたけど今は怖い。人の生死を決めたくない。ねぇ、太宰君‥‥私が異能を使えるようになったら私を−−」