【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第21章 複雑な関係と因果
数日後、豪華客船では武装探偵社の共食い解決のパーティーが行われていた。
青のパーティードレスを身に纏った香織はテラスの柵に肘を置きながらヨコハマの街を見ている。
「やぁ、こんなところに居たのだね」
「太宰君‥‥身体は大丈夫なの?」
狙撃手にやられ、太宰は手術をする程の重症を負ったと国木田から聞いた。
「この通りぴんぴんさ」
「それなら良かった。太宰君は変わったね‥‥なんか生き生きとしてる」
「‥‥それは香織と友人のお陰だと思うよ」
「友人?マフィア時代の?」
「織田作之助。私は織田作と呼んでいた。彼はマフィアの下級構成員で私と安吾‥‥ほら、カフェでメガネを掛けたスーツの男がいたでしょ、その三人でよく飲んでいた。織田作はもういないけど」
「私はポートマフィアで生きる意味を探していた。その頃は血と暴力、人間の本能に近いところにいれば何か見つけられると思っていた。でも、どれだけ手を汚をしてもそこにあるのは虚構だけだった。でも織田作のおかげで気づいたよ。私はずっと孤独を埋めようとしてたんだってね。私はたくさんの人を自分のために殺した、でもそれに意味は無かった。」
(……知らなかった)
知らなかったというより知ろうとしなかった。
太宰の性格からは想像ができない程の思いに香織は昔のことを思い出していた。
『太宰君は−−今、幸せ?』
廊下の窓から校庭を見ながら香織が口を開く。
『‥‥分からない、何でそんなこと聞くの?』
『なんかね、初めて会った時に違和感があったの、それが何なのか分からなかった。でも、今だとその違和感が分かった気がする。太宰君は孤独を埋めようとしているじゃないかって』
『っ!?』
太宰は驚いて香織を見つめる。
『気を悪くしたらごめん。ここからは私の勝手な憶測、太宰君がマフィアに入ったのは生きる意味を探すこと−−そう思うんだ』
(私が太宰君の生きる意味と孤独を埋められたらいいのに……)