【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第20章 探偵社、マフィア、そして鼠
「貴重な物質の異能者をこんなところで死なせるには勿体ないです。これを付ければ異能が使えません」
リングのようなものが後ろから渡される。
それを付けてディアナは後ろを振り向いた。
「僕と一緒に来ませんか?僕なら貴女の望みを叶えてあげられます」
虚ろな赤紫色の瞳がディアナを捉える。
『望み』の言葉にディアナがピクリと反応する。
「私は‥‥家族と呼べるものが欲しい」
ずっと部屋に閉じ込められていたディアナには欲しいものがあった。
月1で会う村長に渡された小説。
その小説には家族と一緒に困難に立ち向かうというものだった。
頑張った時に頭を撫でて褒めれたり、喜びを分かち合える部分に惹かれた。
対等に話せる存在が欲しかった。
血の繋がった家族のことは知らないし聞いても教えてくれない。
仮に死んでいたとしても他人事のように感じる。
「いいですよ、それが貴女の望みならば」
「本当に?」
「はい、嘘をつく理由がありません。ではこれからよろしくお願いしますね、ディアナ」
後から聞いた話では私の村は『異能者狩り』の集団に襲われたらしい。
謎の能力を薄気味悪いと思った民間人が私の情報を掴んで訪れた。
つまり私の存在がみんなを殺したということになるのかな。
こうして、私はフョードルの養子になって第二の人生を歩む。
「家族になるとは言いましたが何でダディなのですか?」
「本に書いてあったから、だってダディはそんなに若く無いんでしょ?」
「貴女の辞書に失礼の言葉は無いのですか‥‥」
右も左も常識も分からない私のためにダディはずっと本当の父親みたいに尽くしてくれた。
そして私は『死の家の鼠』に所属した。
ダディは本当に凄いといざ入ってみて分かった。