【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第20章 探偵社、マフィア、そして鼠
お互い、相手がどう動くか探っている。
先に動いたのは美鈴だ。
「『桜花爛漫・三日月』」
桜を使って手裏剣のように香織に向けて放つ。
複数の桜の手裏剣を香織は躱しながら避けきれ無かった手裏剣を拳銃で壊そうとする。
(あの桜どんだけ硬いの!?)
発砲したのはいいものの、手裏剣が硬いせいか粉砕できなかった。
身体を使って避けようにも無理だ。
幸い、顔に向けられて放たれているため顔を少しずらして攻撃を回避する。
(避けてるだけじゃこっちが先に限界になる)
息を整えて戦況を考える。
香織は体力や身体能力など一般人とは変わらない。
向こうは鍛えられたマフィア故に香織のほうが先に限界を迎えるだろう。
(迂闊だった。でも‥‥)
あのまま大人しく探偵社の部屋に引きこもっていればマフィアと対面することはない。
絶体絶命の状況なのに香織の頭には『後悔』の文字が浮かばなかった。
(私が持っている知識や全てを全部使ってやる!)
美鈴よりかは劣るかもしれないが最初から諦めるよりマシだ。
「『桜花爛漫・桜吹雪』」
辺り一面が桜の花びらに覆われて視界が奪われる。
(桜で視界を奪って隙を狙う気だ!)
人の気配が消えたと感じた美鈴は異能を解除する。
すると、香織がいた場所には彼女がいなかった。
内心焦っているであろう美鈴の背後を香織は拳銃を突き付けて取る。
「撃ってみなよ」
何のつもりなのか美鈴はわざとその場に留まる。
数秒経っても香織が撃つ気配が無い。
(‥‥撃てない)
香織は人を殺したことも無いしこれから殺しを行う気も無い。
命の重さを目の前に突き付けられた感覚がしてトリガーを引けなかった。
美鈴は香織の身体に軽い蹴りを入れて吹き飛ばし、攻撃耐性に入るが第三者の介入によって邪魔される。