【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第20章 探偵社、マフィア、そして鼠
探偵社の建物から出て、マフィアのビルに向かったのはいいものの近付くにつれて銃声が聞こえてくる。
(流れ弾に当たらないようにしないと‥‥)
「『桜花爛漫・徒桜』」
周囲を警戒しながら歩いていると桜の花びらが頭上から襲い、香織はギリギリのところで躱した。
避けた桜は普通のものと違い、地面に突き刺さる程硬かった。
(え、なにこれ)
香織が驚いていると目の前に美鈴が現れる。
「ご主人、150億の子が居ますがどうします?」
『香織か、絶対に殺すな』
耳に付けたインカムで美鈴は中也と話し終えると香織に意識を向ける。
中也と話しているとは知らない香織は身体を固くする。
(私を狙ったということはマフィアの人間、異能者だから拳銃が役に立つかどうか怪しい)
香織は袴に忍ばせていた拳銃をそっと取り出す。
戦う術を持たない香織に出来ることは逃げることだった。
しかし、相手もそう簡単に逃してはくれないだろう。
(桜を操る異能者‥‥)
以前、マフィアに拉致された時に太宰と一緒に敦に懸けられた懸賞金を調べる際に見たパソコンに異能者リストがあった。
「東雲美鈴」
準幹部で彼女の異能力『桜花爛漫』は春を操る異能だ。
二年前からスイスで潜入任務を行っていると書かれていたが今こうして目の前にいるということは潜入任務を終えて帰って来たのだろう。
「知っているのね」
「‥‥」