【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第19章 過ぎ去った時代
「最後にフェージャと会えて‥‥良かった。私を、幸せにしてくれて‥‥ありがとう」
「僕のほうこそありがとうございます」
リーリヤはフョードルに向けて手を近付ける。
フョードルはその手を強く握りしめた。
「貴女には娘がいるそうですね、父親は誰です?」
情報を集めるうちに分かったリーリヤの実娘の存在。
この時、フョードルは香織の父親は自分だと思いこんでいた。
「ヘヘ、ひーみつ‥‥知ったらフェージャ、殺しちゃうでしょう?」
ふにゃとリーリヤが笑みを浮かべて答える。
少なくとも香織はフョードルの子供では無いとリーリヤは否定した。
その言葉にはフョードルが何者なのか知っているようだ。
「そうですか、貴女らしい答えですね」
リーリヤは初めて会った時と変わらなかった。
「あの子を‥‥お願いします。あの子さえ生きていれば私はどうなってもいいので」
彼女は我が子の身を案ずる母親の顔をしていた。
フョードルが惚れた女性は当時の面影が無く、そこには知らない一面が存在していた。
「ええ、分かりました。僕に任せてください」
「ありがとう」
安心したのかリーリヤは目を閉じた。
フョードルは魂の無いリーリヤの身体を後にするのであった。