【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第19章 過ぎ去った時代
「ケホッケホッ」
リーリヤ、もとい如月彩愛は自宅の壁に寄りかかりながら腹部から流れる血を手で抑える。
突然やって来た知らない男性が彩愛と彼女の娘である香織を襲った。
その時に彩愛は腹部を刺され、少し時間が経てば失血死で死ぬ。
襲ってきた男性を異能で気絶させ、後にやって来た柳瀬和雄と名乗る男性に香織は連れて行かれた。
助けに行こうにもこの身体ではいけない。
香織が殺されることは無いと思うが彩愛は親として心配だった。
「最後に‥‥フェージャの顔が見たかったなぁ」
吐血しながら死を悟る。
そして、段々彩愛の視界が暗くなっていった。
「貴女のその望み、叶えてあげましょう」
その言葉が聞こえ、彩愛が目を開けるとそこには幻想的な景色が広がっていた。
辺り一面が水面に覆われ、雲一つない青空が写し出される。
水面には青が少し入った白髪の髪にベールを被った女性がいた。
その容姿を一言で表すなら『聖女』という言葉がピッタリだろう。
彩愛はその女性のことを知っていた。
「あの頃の私の願いを叶え、私から記憶を奪ったのもアナスタシア、あなただったのね」
「あら、その様子だと記憶が戻ったようですね」
「今更私の望みを叶えてあげる?私はもう死んでいるのよ」
「いいえ、貴女はまだ死んでいません。血を多く出し過ぎたため意識を失っただけ、ですがもう死にますよ」
「大体、私の望みを叶えることであなた側に何かメリットがあるの?」
「ありませんね、ただ私の話相手がいなくなるのは少し寂しいです。私からのささやかな贈り物、受け取って貰いますか?」
不思議な女性、アナスタシアの言葉に彩愛は理解に追いつかない。
「贈り物?」
「今から貴女の寿命を伸ばします。伸ばすと言っても数分しか出来ませんが‥‥それに、現実世界では貴女を待っている人がいます。最後のお別れをしたほうが後味はいいと思いますよ」
「‥‥ねぇ、最後に聞いてもいい?」
「何ですか」