【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第19章 過ぎ去った時代
「どうでしょうね、私は生まれてから地下室に居て両親と会ったことが無いので」
「私、異能力者なんです。どんな異能なのかは知りませんが強力な異能らしいです」
地下で暮らしていたというならば納得がいった。
強力な異能ならば私欲を蓄えた貴族が欲しがるだろう。
どんな異能なのかは知らないらしいがそれは争いの火種になるのは間違いない。
リーリヤを最初から存在しないかのように地下に幽閉し、存在を知るのはほんの一握りの限られた人間。
隠蔽されているが故に調べても情報が出てこなかった。
「異能さえ無ければこんなことにはならなかった。でも残酷ですよね、こんな異能があったからこそフェージャと出逢えた。私が外の世界に行きたいと願ったから‥‥だからこんなことになった。これ以上、フェージャと一緒にいるわけにはいかないんです」
するりと握られた手をリーリヤは放してフョードルから目を逸らす。
フョードルは言い返そうとするが身体が動かず、声が出ない。
それが彼女の異能だと理解するのに時間はかからなかった。
「さようなら、私のことは忘れて下さい」
フョードルの前からリーリヤが立ち去ると彼の身体は自由になっていた。
リーリヤを連れ戻すべきだがまだやるべきことがある。
燃え盛る屋敷をフョードルは後にした。