【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第19章 過ぎ去った時代
「た、大変です!皇帝が暗殺されました!!」
偶にある政務でフョードルは王宮に来ていた。
きりのいいところで仕事を終わらせ、いざ帰ろうと廊下を歩いていた時に慌ただしい声が聞こえた。
いつかは倒れるだろうと思っていたが思ったより早かった。
どうやら皇帝を暗殺したのは革命派で民衆の大半が彼等に協力していた。
「フョードル様!屋敷が襲撃されたとのことです!!」
血相を変えた部下がフョードルの前に跪く。
フョードルの頭に浮かんだのはいつも見送ってくれるリーリヤの顔。
急いで屋敷に向かうとそこにはキャンプファイヤーのように燃える屋敷。
屋敷の中を探そうにも入れそうにない。
フョードルは燃える屋敷をただ見ていた。
「フェージャ」
リーリヤがフョードルの前に現れた。
「ごめんなさい、私のせいで」
「何故貴女が謝るのです」
「‥‥ずっと黙っていたんです。少しですが記憶を思い出したことに‥‥その結果がこれです」
目を伏せて苦しそうにリーリヤが言う。
フョードルはリーリヤに近付いて彼女の手を握る。
「教えてください。貴女のことを‥‥僕は知りたいです」
「私は、リーリヤ・グラナート。凄いですよね、記憶を無くして本来の名前を思い出せないのに同じ名前をフェージャが付けただなんて」
「きっと貴女の両親も僕と同じ考えだったのでしょう」
リーリヤ・グラナートという名の人物をフョードルは知らなかった。
グラナート一族、その名前は皇帝一族の名であり、モスクワに住んでいれば誰でも分かる名だ。
リーリヤが高貴な存在だということには薄々気付いていた。
確証が無いだけで別に驚きもしなかった。