【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第19章 過ぎ去った時代
時間が流れるのは思ったより早く、気付いたらフョードルと初めて会ってから3ヶ月が経とうとしていた。
二人はお互いを愛称で呼び合う程仲良くなっていた。
フョードルはリーリヤのことをリリーとリーリヤはフョードルをフェージャと呼んだ。
それからも関係は進展して、恋人という関係になった。
「好きです。リリー」
「っ!!」
リーリヤは頬を染めてフョードルをじっと見る。
「えっと‥‥その‥‥押しかけ女房みたいな感じでここにいるようなものですし‥‥私でいいんですか?」
「今更そんなの気にしていたのですか?僕は貴女がいいんです。毎日僕のために料理を作ったりしてくれる貴女が」
「‥‥嬉しいです。私もフェージャのこと好きだから‥‥こんな私ですけどよろしくお願いします」
「フョードル様、リーリヤ様のことについて調べたのですが何一つ情報が出てきませんでした」
思い出に浸っていたフョードルは部下の言葉を聞いて現実世界に戻る。
部下からの報告を聞いた彼は黙り込む。
「引き続き調べてみますがあまり期待しないで下さい」
「そうですか」
部下が部屋から立ち去ったのを確認すると、フョードルは執務室の椅子から立ち上がり、窓に視線を向ける。
その先には呑気にメイド達と戯れるリーリャの姿があった。
「‥‥」
リーリヤの身元が判明しないとなると平民より下の位かあるいは高貴な存在と考えるのが普通の人なら妥当だろう。
(情報が無い‥‥まるで最初から存在していないかのように捉えられますね)
たったの3ヶ月過ごしただけでフョードルの中にあるリーリャに対する想いが大きくなっていった。
毎日自分のために料理に挑戦して失敗しながらも頑張ったり、政務で偶に帰りが深夜になるのも構わまずずっと起きてくれる彼女をいつの間にか好きになっていった。
(彼女が何者かなんてどうでもいい、僕の傍でずっと居てくれればそれで)
「あっ、フェージャ〜!」
視線に気付いたのかリーリヤがフョードルに手を振る。
僅かな自分に対する彼女の仕草に初めて幸せを感じた。
しかし、それは皇帝が暗殺されたことを気に崩れてしまった。