【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第19章 過ぎ去った時代
「記憶喪失のようですね、名前を思い出せないのなら色々と不便です。僕が付けても良いですか?」
「すみません、お願いします」
フョードルは数秒間考えた後、口を開いた。
「リーリア……はどうですか?」
「リーリア?」
聞いたことがないと思ったのか女性は首を傾げる。
「はい、貴女からは無垢や純潔を感じたのでピッタリだと思いました」
百合の花言葉として挙げられるのは、『純潔・威厳・無垢』。
初めて彼女に会った第一印象は清潔さを感じた。
フョードルにしてはいいネーミングセンスだろう。
「いいですね!その名前」
「これからは僕と一緒にいてもらいます。その方が安全でしょう」
「これからよろしくお願いします!えっと---」
「フョードル。フョードル・ドストエフスキーです」
不思議とフルネームで名乗ってしまった。
自分で言っておきながらも驚く。
「フョードル、これからよろしくお願いします」
こうして二人の奇妙な生活が始まった。
今思うとこの時から全ての始まりかもしれない。