【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第3章 禁忌という名の罪
それを聞いた香織は笑ってしまう。
一体、聞く前に話したことは何だったのだろうか。
選択肢は一つしか無いくせにもう一つ用意されるとは思わなかった。
流石ポートマフィアの首領、面白い人物だ。
マフィアの上に立つ者はこんな人なんだろうか?と思いながら香織は口を開いた。
「私の言葉聞いていなかったのですか?私は真実から目を背きたくない。話を聞いたからには私の命は貴方達ポートマフィアに握られている。今更圧をかけても遅いのですよ。」
(今も私はこの人の手の平で踊らされている。でもそれでもいい、乗ってやろうじゃないか。)
「聞く必要も無かったようだね。柳瀬香織‥‥ポートマフィアは君を歓迎するよ。」
話は終わり、太宰と中也と共に香織は執務室を後にする。
「嗚呼、そうだ。今日あったことは他言無用だよ、学校でも同級生としてよろしくね。」
「はい」
「手前、後悔しても遅いぞ。」
「私はこの選択に後悔しない。今も、後からも」
「肝の据わった女だな。」
こうして柳瀬香織はポートマフィアと協力関係になった。
今日は遅いということもあり、マフィアに泊めさせてもらうことになった。
◆ ◆ ◆
香織が去った後、首領の執務室にはまた新たに来客が訪れた。
「本当にいいのかえ?マフィアが探っておる者の娘なぞと協力を結んで」
森の目の前に立つ花魁の服装をした女が聞く。
彼女はポートマフィアの五代幹部の一人、尾崎紅葉だ。
「安心してくれ。あの子は何も知らない教会育ちの娘、監視役に太宰君と中也君を任せてある。」
「首領殿も抜かり無いのう。」
「念には念をね、ところで紅葉君に頼みたいことがあるのだよ。」
首領の頼み−−−即ち、それは命令ということだ。
森の話を聞いた紅葉は「なるほどのう」と言葉を零す。
「じゃがそれは太宰や中也のほうが適任じゃと思うのだが‥‥私わっちもあの娘に興味があるでのう。それに首領殿の命とあらば引き受けるしかなかろう。」
「ありがとうね、紅葉君。」