【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第16章 DEAD APPLE
鳥の囀りと船の汽笛が響く。
海が見渡せる墓地に訪れたのは武装探偵社社員、中島敦だった。
「ヨコハマにこんな場所があったんだ‥‥」
敦は意外そうに呟くも、墓地の一面に人影を見つけると駆け足でそちらへと向かった。
「あ‥‥」
大樹の下に建てられた墓。
そこに墓石頭を預けるようにもたれかかる太宰がいた。
敦は太宰がいる墓まで来ると立ち止まり、手を合わせて黙祷を捧げる。
「中島敦君」
「はい?」
「誰のお墓か分かっているのかい?」
「いえ‥‥でも太宰さんにとって、大事な人なんですよね?」
敦にそう言われた太宰は少し笑いながら返す。
「‥‥何故そう思う?」
「太宰さんがお墓参りなんて初めて見ますから」
「これがお墓参りしているように見えるかい?」
墓石にもたれかかりながら少し惚けたように返す。
「見えますけど‥‥」
予想外だったのか太宰は、少し驚いた顔をしたあとに微笑む。