【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第15章 自殺か他殺か
「分かりませんか?火の玉の正体はあなたです。資料には被害者の死亡推定時刻は午後11時、そしてこの地域で停電になったのは午後10時30〜1時。渡辺健二さんが死んだのを確認したあなたは自殺をしたように見せかけるため、バースデーカードとこの本を本棚に戻そうとした」
「しかし肝心のバースデーカードがない。探している内に停電になり、本だけを戻すことにした。実はこの本、逆さまに入れられたまま本棚にありました。辺りが暗い中、ライターの火を頼りに本棚に戻したため逆さまになっていることに気付かなかったというところですね」
「でも、何でバースデーカードが本の中に‥‥」
「本の栞として手元にあったバースデーカードを挟んだだろうね、殺されるとは知らずに」
「何で‥‥遺産のためとは言え、健二さんを殺す必要はないでしょ!?」
真相を聞いた八重が怒りをあらわにする。
「それでも渡辺健二さんは家族を愛していた。その証拠に−−」
香織は金庫の前にしゃがんで、ロックを解除する。
「あなた、何で番号を知って‥‥」
「好きな人の誕生日をパスワードにする人は結構います。単純なことです」
開かれた金庫の中には四本のワインが置かれていた。
「スナックのママさんが言ってました。渡辺健二さんは大事な人が生まれた年のワインを飲むのが好きだと‥‥この四本は弟の家族。そして、八重さんが生まれた年のワインも入れるつもりだったはずです」
「そんな‥‥」
麻友は泣き崩れる。