【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第15章 自殺か他殺か
「いいところに気付いたね、敦君。確かにワインには蓋がしてある。でも、左右の端に小さい穴があります。薬品メーカーの屋敷であるならば注射器があっても不思議ではありません。恐らく注射器を使ってワインに毒を入れたと思います」
(よく、与謝野さんと一緒に飲んでたから気付いたんだよね)
心の中で与謝野に感謝をしながら香織は話を続ける。
「しかし、毒入りのワインを机の上に置いたものの、渡辺健二さんは金庫にあるワインしか飲まないと気付いたはずです。ワイン一本だけでは不審に思われる。こう思ったあなた達はこのバースデーカードを使った」
「そうか!昨日は誕生日だったからワインとバースデーカードを置いても不審に思わない」
閃いたように敦が言う。
「しかしここで思わぬ展開があった。それは、昨日の雷で起こった停電です。向かいに住む子供から『真っ暗な渡辺健二さんの部屋に火の玉が見える』と言ってました。渡辺健二さん殺害後、この部屋に来たのは一人です」
香織はそう言いながら光輝に視線を向ける。
「光輝さん、あなたは麻友さんと八重さんが口論している時にタバコを吸ってましたよね?」
「だから何だよ?」
香織に口答えするかのように光輝が言う。