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凜恋心【最遊記】

第2章 旅立ち


「三蔵…?」
「八戒、次の村か町までどの位で行ける?」
「なんですか?藪から棒に。」
「いいから、どの位で着く。」
「何もなければジープなら2日後には…」
「…そうか。」
「なにか要るならここで買えばいいじゃねぇの?」
「……」
「て、無視かよ!」

そう言いながらも悟浄も部屋を後にした。残った二人は沈黙のまま、時をやり過ごしていたが、ふと八戒が口火を切った。

「三蔵?」
「……ジープ、もし仮に、後部座席に一人増えても問題ないか?」
「三蔵、それってもしかして…」
「俺の意見じゃねぇよ。あのクソババァの企みだ」
「…観善音菩薩…の?」
「たく…俺は承諾はしてねぇし、あの女も来るとは聞いてない。」
「もしかしてさっき言ってた買い物って、彼女の身の回り品ですか?」
「…さぁな」

そう短く答えた三蔵に目配せをして、八戒は小さく笑うとゆっくりと立ち上がった。

「それなりの物、一通り揃えますか?」
「一緒に来るかも解らねぇんだ、今から買っておく必要はねぇだろうが」
「まぁ…それもそうですが…」
「明日出る時に聞く。その時に答えをもらってそのまま出発するからな。」
「相変わらずですね…」

そう呟いて再度座り直した八戒。『あ、』と発する八戒に三蔵は徐に顔を上げる。

「この部屋、雅ちゃんの部屋なんですよね?」
「だったらどうした?」
「この部屋から服だけでも持っていったらどうですか?」
「却下」
「何故です?彼女も着なれている服でしょうし。」
「一緒に来るなら嫌な思い出を背負わせるつもりなんざねぇよ。ただでさえこれから先、嫌って程見るんだ。」
「そう、でしたね」

そう呟くものの、三蔵の優しさに優しい笑みが溢れていた。

夜も深まる頃、悟空と悟浄も戻ってきた。

「皆さん、明日発つんですよね」
「えぇ、長いことお世話になりました」
「こちらこそ、たいしたおもてなしも出来ず…ちゃんとした娘でもいたらよかったんですが…」

そう言って雅の母親はキッチンへと戻る。翠藍はその場に残りもくもくと食べる四人に頭を下げた。
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