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凜恋心【最遊記】

第13章 赤きリコリス


「誰も死んじゃ行けない…!自ら絶って良い命もない!……でも、そうやって失った命を弔うこともなく嘲笑うかのように扱うお前達みたいなのはもっと許せない!!」

言うだけ言って雅は零れる涙をぐいっとぬぐったまま立ち尽くした。言われた男達もなにも言えずにただ黙っていた。辺りには沈黙が漂っている。それを破ったのは三蔵だった。

「その位にしておけ…」
「三蔵?」

どこからとも五佛冠を出し頭の上にのせると、経を読み出した。

「三蔵様ぁ」
「あぁ……これで少しは…」

短いながらもしっかりと読み終えた三蔵。

「三蔵様、ありがとうございます。」
「本当に…!!」
「勘違いするな。経は気休めにもならん。俺が読むのは死んだ奴のためじゃあない。」
「え?三蔵様?」
「そこにいるうちのが、手に乗らなくなったんでな…」

そういうと三蔵はぐいっと雅の肩を引き寄せて自身の後ろに匿うように背に隠した。二人の男に対してじっと見ると、少し低めの声で話し出した。

「いいか、こいつも言ったが、命は一つ二つと数えるもんじゃねぇ。覚えておけ」

そういうとくるりと踵を返して雅を連れて残りの三人のもとに戻っていく三蔵。

「いい加減にテメェは落ち着け」
「……ッッ」
「着替えたら出るぞ。」

そうして支度を済ませると村を後にしようとしていた。そのときだ。

「あの!!」

そう声をかけてきたのは翠嵐だった。

「これ…一輪だけ咲いてたんだ…」
「これは…」
「この花…いつもは咲く時期じゃないんだけど……」
「フン…お前の姉にでも手向けてやれ」
「……それと…」
「なんだ」
「姉ちゃんを助けてくれて…ありがとう…!」
「助けれてねえだろう…」
「違う!助けてくれて…ありがとう!」
「フッ……行くぞ八戒」

そう言い、ジープを走らせた一行。

「あの花って……」
「曼珠沙華…彼岸花やリコリス、とも言います。」
「なんかたくさんあるのな」
「赤の花言葉は確か、独立、再開、悲しい思い出……それと…想うはあなた一人……でしたっけ?三蔵?」
「俺に聞くな」
「……白明ちゃん……」
「最後の別れに咲いたのでしょうか」
「さぁな」

そう呟いた三蔵に同調するように他の皆も、言葉なく、ただ思い思いに考えていた。
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