第13章 赤きリコリス
そんな時、回りに居た大人達の中から心ない言葉が聞こえてきた。
『でも、もとは…白明ちゃんが天人様に献上されるはずだったんだから…』
『五体満足で残ってるだけ良いとしないと…なぁ』
そんな言葉を聞いて三蔵一行は一気に怒りに満ちた。
「おい!」
「悟空…まずは落ち着きましょう?」
「ヤな事言ってんじゃねぇぞ…」
しかし、スクッと立った雅はツカツカっとその言葉を放った二人の元に向かった。
パンッ!
「いってぇな!」
パンッ!!
「なんだ…ってんだ!!」
雅は話していた二人の頬を思いきりひっぱたいた。
「あなた達は男だから…天人様に献上される人の気持ちが解らないのよ…」
「は?!」
「どれだけ悔しいか…まだまだやりたいことはあったのに…大事な人を残していかなくちゃ行けない…!そんな思いで…」
『旅の人にまで迷惑をかけてしまってごめんなさい…』
『そんなことないよ?私にも大事な人が居るから…生きて帰らなきゃ行けない場所が…あるから』
『でも、ありがとう…』
『え?』
『まだ翠嵐が小さいから…』
「だってそうだろ?間違っちゃいないさ!」
「白明ちゃんには悪いが、本来なら…な!」
「そうだよ」
「だから!!失って良い命なんてないんだよ!!」
『まだまだやりたいことがあって…』
『翠嵐くんか…私の兄も翠藍って言うの』
『そうだったんだ…離れて寂しくない?』
『寂しいけど…今は愛する人三蔵が居るから…兄の代わりじゃなく…本当に大切にしたい人達…』
『でも、天人様に食われたら…』
『だから、帰らなきゃ行けないからね』
「誰だって!どんな理由があっても死んで良い理由なんかない!」
「でもその一つでこの村何十人と助かる『ふざけるな!!』…ッッ」
「命をそんな風に軽く数えるな!!死んだらなんにも出来ない…ッ!もう…終わりなの!!人の命に重いも軽いもない!みんな同じなんだよ…!!」
『死んじゃったら…?』
『死なないよ』
『あなたは強いね……私よりずっと』
『強くないよ…怖い…でも不安じゃない…信じてるから…』
『私もそう言う人に出会いたかった』
『違うよ…』
『え?』
『誰かの強さを信じるんじゃないの…自分の信じたいものを信じるんだよ?って、三蔵あるひとの受け売りだけどね』
『……翠嵐……』