• テキストサイズ

凜恋心【最遊記】

第13章 赤きリコリス


くすくすと笑いながらそっと服を整え、ベッドから降りる。三蔵の目の前にまでやってくると、深々と頭を下げた。

「ありがとう…」
「…もうあんな事言い出すんじゃねぇよ」
「三蔵?」
「誰かの為に、自分自身を犠牲にして良い訳ねぇだろうが…ましてやお前は、三蔵でもなんでもねぇんだから…」
「そう…だけど…」
「けど、なんだ」
「あの翠嵐君の思い…何となくわかったから…」
「同調して、もしテメェが死んだらどうするんだ」
「私は死なない」
「そんな保証ないだろうが」
「保証ならある…」
「ぁん?」
「三蔵が言ったんだよ?誰かの強さじゃなく、自分の信じたものを信じて貫けって。だから私は私が信じた皆を、……三蔵を信じた。それだけ」

そういって笑いかけた雅。白装束の薄着のまま、前打ち合わせだけ手で押さえた雅のその姿は、三蔵の目には不謹慎にもとてもきれいに映って見えた。

「タク…」

そう呟くと、三蔵は立ち上がり、左手をポケットにいれたまま右手で雅の頭をそっと撫でた。

「バカだろ…テメェは…」
「バカじゃない…ッッ」

売り言葉に買い言葉と言わんばかりに顔をあげた雅。次の瞬間には三蔵の両腕に包まれていた。

「いや、どう考えてもバカだ。愛の一つも言わねぇ、自分の信じたいことを信じろとは言ったが、俺を信じろとは言ってねぇ。そんな男信じてんだぞ?」
「十分だよ。それに…好きだって言わなくてもこうして抱き締めてくれてる…愛だの恋だの…三蔵の言う甘ったるい感情が無かったら三蔵、してくれないでしょ?」
「…ッッ…」
「だから…十分好きだって言ってくれてるのと同じだよ」
「……救い様のねぇバカだな…本当に…」
「なんとでも言って良いよ…」
「…いや…、俺自身が…な」

そう言うとそっと体を離し、両手で頬を包み込むとそっと腰を屈めて唇を重ねた。
/ 402ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp