第13章 赤きリコリス
「本当に…本当にありがとうございました。」
「フン…どうでもいい。」
「明日、ちゃんとお礼いたしますので…今日はお休みになってください」
「そうさせて貰いましょう」
「そうだな」
「良し、じゃぁ」
「待て、悟浄」
まともに名前を呼ばれた悟浄は立ち尽くした。その両腕から三蔵は何の躊躇いもなく、雅の体を受け取った。
「もう十分だ」
「あらぁぁ」
ふわりと抱き上げたまま、三蔵は部屋に向かっていった。
「無茶しやがって…」
そう呟いて…
それからどれくらいの時間が経った事か…
「ン…」
ふと目を覚ました雅。衣服は着ていた白装束のままだったが、意識を無くす前とは明らかに部屋の様子が違う。
「えっと…」
「起きたか」
そんな声のする方を見てみると、三蔵が窓際に座っていた。微かに覗く月明かりに透けて見える三蔵の表情が今の雅には読みきれなかった。
「三蔵…ありがとう」
「なにがだ」
「だって…私がここにいるってことは天人様から救ってくれたってことでしょ?」
「助けろって言ったのはテメェだろうが」
「そうだったね」