第13章 赤きリコリス
「生気を吸うと言うのが本当なら、雅は天人様にとって最高級の女性、と言うことですね」
「ふざけるな」
「僕はふざけてるつもりはありません。ただ、そんな女性が居るなら、もしかしたら天人様の来訪が早まる可能性…もって…」
「やぁな…気配だぜ?」
「ゲロゲロ…なんか吐き気する…」
「……チッ…」
八戒の予想した通りだったのか、異様な気配と同時にバタバタと騒がしくなってきた。
「すみません!」
「なんでしょうか?」
「…あ…天人様が…」
「あー…やっぱり来ちゃいましたね…」
「今村の皆で雅さんを表に出してるんですが!!」
その言葉を聞いた三蔵はいつになくスッと一番に立ち上がり、双肩にシュルリと経文をかけた。
「さっさと行くぞ…」
「はいはい」
そうして三蔵は一も二もなく部屋をでた。通された広間に着くとまるで死刑台のようにそびえ立つ所に雅がそっと縛られてくくりつけられていた。
「あれ!!雅じゃね?」
「全く…」
「さて……来ますよ?」
八戒の落ち着いた言葉と同時にドスンと重たい音が響き出す。
「この…匂い……うまそぉだなぁ……」
「キモ…」
「今年はぁ……極上だぁ…!!」
大きな姿のまま、ドスドスと歩いてくる。大柄と言っても二メートルはあるものの、それほど力があるようには見えなかった。
「なぁ八戒…あいつってそんなに強いか?」
「どうでしょう…」
「まぁ、やってみるか!」
そう意気込み、悟空は如意棒を、悟浄は錫杖を、八戒は気を貯め構えた。しかし、ジャリっと砂を踏みしめて三蔵が一歩前にでる。