第2章 旅立ち
「何を話していたのですか?」
「んー…何かすげぇ雅がかわいそうで……」
「悟空?」
「だってさ。ずっと一人なんだよ…俺達が泊まりに行く前からずっとずっと一人なんだよ…」
「…悟空、同情だけじゃ寄り添ったことにはならねぇんだよ」
「そうかもしれないけど…」
「中途半端な優しさが時には鋭い刃にもなるんです。」
「じゃぁどうしたら雅救えるんだよ!」
「………救えやせんよ」
ふと三人の会話に割って入った一人の老人がいた。その声に足を止めた三人は老人に声をかけた。
「失礼ですが、…どう言うことでしょうか」
「あの子には人並外れた力がある。感情ひとつで自分の父親ですら殺してしまう。だからわしらも出ていけとは言えない。力をどうやって手に入れたのか、どうしたら押さえれるか、それすら解らんのじゃ。この村ではあの子はただ一人の存在じゃ。どんな薬も払い師も効かなかった。」
「…だからって……」
「それこそ前にきた三蔵法師様でも手に終えなかった。それも仕方ないこと。感情が揺れ動かなくてはあの子の力は出ない。見えないものに手は打てないからのぉ」
それだけ言うと老人は去っていった。
「…そんな事……雅の力、あんなにキレーなのに…」
「確かになぁ。」
「三蔵以外の三蔵がダメでも三蔵ならなんとか出来るんじゃねぇの?」
「うん、良くわかんねぇけどな?」
「確かに、うちの三蔵なら…と言いたいですが、言ってもただの人間ですからね…」
「だったら!八戒なら?八戒の気功みたいなのだったしさ!」
「あ、なーる。」
「でも僕達、明日にはこの村出るんですけどね」
その一言で悟空と悟浄は一気に言葉を失った。
***
時同じくして、一方の三蔵。
一人で、窓際に座り新聞を読んでいた。しかしバサリと畳むと横におき、深いため息を吐くと顔を向けること無く声をかけた。
「悪趣味だな、一体何の用だ?」
「クックッ…元気そうだな。」
「何の用だと聞いている。それに姿ぐらい出しやがれ」
「相変わらず口の聞き方がなってねぇなぁ。」
そう言うと姿を表したのは菩薩だった。