第13章 赤きリコリス
「おい…三蔵…」
「なんだ」
「本とにあのガキがじいさん連れてくるまで俺等入れねぇの?」
「まぁま、悟浄。三蔵なりの考えがあるでしょうし…」
「あるか、んなもん」
「え?」
「単刀直入だ。入れねぇなら連れてこい。それまでだ」
「……あっそうですか…」
そう答え、一行は村長がやってくるのをただ待っていた。すると奥の方から先ほどの少年と一緒に皆が想像していたよりも若いと言っていい位の男性がやってきた。
「これは…うちの孫がとんだご無礼を…」
「いや、それは構わん。ただ、頑なに村に入れてくれなかったものでな」
「ほら!翠嵐すいらん!!謝りなさい!」
「すい…ら…ん?」
「…ごめんなさい…」
「雅?どうかしましたか?」
「……ッッ…」
「雅?」
「え?あ…ごめん…」
「いえ…?」
そんなことを話していると村長は三蔵の双肩にかかる経文に気付いた。
「もしかして…三蔵様ですか?!」
「…あぁ…」
その三蔵の返事を聞いた村人は、わぁっと集まってきた。
「良かった!この村にもようやく三蔵様が来てくださった!!」
「…どう言うこと?」
「これで天人様に差し出さなくてすむ!!」
「あまひとさまぁ?」
悟空の間延びした返答にも誰もが頷けた。さっきまでは入るなと言われていたのにも関わらず、三蔵と解った瞬間にとてつもない歓迎の仕方に加えて突如出てきた天人様なる存在。一体この村で何が起きているのかと考えると同時に嫌な予感しかしていなかった。
「どうぞ」
そう言われて通されたのは、村長の家だった。この村一番の大きい家だったものの、やはり今までの街と比べると多少質素ではあったが、それでも暖かさを感じるような家だった。