第13章 赤きリコリス
ジープを走らせて直に、村の入り口が見えてきた。
「こんなに近かったのか」
「だったら昨日の内に来ても良かったかもねぇ」
「確かに…でも何でこんなに直ぐだったのに解らなかったんでしょうか…」
「化かされたか?」
「それはないと思うんですけど…」
「どっちでもいい、さっさと入るぞ」
そう言われながらもジープで入り口まで来ると、一行はいつも通りにジープを降り、その姿も白竜に戻るのだった。しかし、足を踏み入れようとしたときだ。小さな男の子が両手を思いっきり広げて一行の前に立ちはだかった。
「帰れ!妖怪!!」
「おんや?これはまた凄いお出迎えだな」
「そんな人の形してても妖怪だろ!!」
「良く解ったな」
「……やっぱり…!!帰れ!!」
「どうします?三蔵…」
「とりあえず、この村の長に話をする。退け」
「く…来るな!!お前も仲間なんだろ?じいちゃんに会わせない!」
「仲間じゃねぇよ、下僕だ」
「ひど…っ!!」
しかし、少年は怯むことなく三蔵を睨み付けている。しかし三蔵もまた一つため息を吐いてしゃがみこむと少年と視線を合わせて言った。
「おい、お前のじいさん、呼んでこい」
「何でだよ!」
「俺等はここから入れねぇんだろ?だったら話をするから連れてこいって言ってんだ」
「お…お前達なんかにじいちゃんが会うもんか」
「会うか会わねぇかはお前が決める事じゃねぇ。お前のじいさんが決めることだ」
「……ッ」
「解ったらさっさとここに連れてこい」
そう言われて両手を下げると、少年はゆっくりと向きを変えて走って村の奥に行ってしまった。