第9章 届かぬ思いと、繋がる絆
「三蔵の事…好きだよ…」
「…なんでテメェは全部勢い任せなんだ…」
「え…?」
「昨日といい今といい…たく…」
「何…え…昨日って…」
「迷惑なんだよ…」
その一言で雅は一気に全身の力が抜けたようにしびれた。ただ、三蔵の放った『迷惑』の二文字がめまいすら起こさせていたのだ。
「ごめ……ッッ…もぉ…言わな…」
そう言いかけた時だ。ぶっきらぼうにもきつく三蔵に抱き締められていた。
「酔った勢いでアイツ等の目の前で言われても、素面じゃねぇヤツの言葉間に受けれねぇだろうが…」
「酔ったって…私昨日…何言った?」
「本人はすっかり忘れてやがるし…」
「三蔵…?」
「大体どうでもいいヤツの面倒なんざ見る気ねぇよ」
「…ッ私……一緒に居てもいい?」
「好きにしろ」
「好きで居ても…いい?」
「……」
「迷惑じゃな『うるせぇ』…ッン」
後首に回された手でグッと引き寄せられたかと思うと雅の問いかけは三蔵のキスで塞がれていた。
「たく…前も言ったが、自分の信じるものを信じてりゃ良いんだよ…」
「三蔵…」
その一言で再度くるりと向きを変え歩き出す。
「さっさとしろ、置いてくぞ」
「待って…!」
「断る」
そう言い放ちながらも歩調は変わらず雅に合わせ、歩いていた。
その頃、眠りについてしまっている悟空を横目で見ながら、八戒は悟浄に聞いていた。
「あの…悟浄?」
「んぁ?何?」
「つかぬ事をお聞きしますが…あなた…本当に三蔵を焚き付ける為だけに雅の事落とす、何て言いました?」
「…さぁな…どうだかねぇ…」
「そう…ですか…?」
「……ッッ…本当に、三蔵サマは不器用だねぇ…」
そういう悟浄につられながら八戒もそっと外に目をやる。その光景を見ながら苦笑いを浮かべていた。
「結構長い付き合いですから…解っているつもりですよ?」
「んー?」
「好き…になってましたか?」
「それ…三蔵の前で言うなよ?マジで殺される」
クツクツと喉をならしながら、悟浄はわざとおどけて見せるように笑っていた。