第9章 届かぬ思いと、繋がる絆
「あの…私…三蔵に謝らなきゃいけなくて……三蔵に貰った…ネックレス…ここでなくしちゃったのに見つからなくて…ごめんなさい…!!」
まっすぐ見ることもできないまま、ただその事実を伝えた雅。早鐘のように響く心音、震える手、緊張から冷たくなる頭……俯いたままの雅は顔を上げることも儘ならなかった。カサ…カサ…っと、芝生を踏み締める音と同時に影が覆う。雅の緊張は最大限に達していた。
「…ハァ…たく、顔上げろ」
「……ッ」
「さっさとしやがれ」
「あの…ごめんなさ…ッ」
謝りながらも顔を上げた途端、目の前にシャラっと流れるように差し出されたのは探していた桜のネックレスだった。
「昼間拾った。悟空と会ったときにな。」
「…さんぞ……これ…」
「さっさと受けとれ、それとも要らなくなったか?」
「違う!要る…」
そう言うとそっと両手で受けとる雅。渡した後すぐに三蔵は背中を向けた。
「待って、三蔵…!」
「まだ何かあるのか」
「これ、ありがとう…」
「もういい」
「それと……あの…」
「なんだ。」
「……」
「言いたい事があるならさっさとしろ」
「あの…私………ッ」
「…チッ」
軽く舌打ちをするとくるりと踵を返すように雅の方に向き直り、目の前にやってきた。
「なんだ」
「……その…」
「何にもねぇなら先に帰るぞ?」
「待って!」
「何なんだ、一体!」
「好きっ…ッッ!!」
勢いに任せて雅は三蔵に想いを伝えていた。そこから離れることも、近付くこともないまま、三蔵も立っていた。