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凜恋心【最遊記】

第9章 届かぬ思いと、繋がる絆


そっと立たせると体を離し、まっすぐに見つめるために悟浄は雅の頬を包み込み顔を上げさせる。じっと真面目に、冗談など微塵も感じない表情を向けたまま悟浄は雅に話し始めた。

「今朝言ったこと…俺マジだぜ…?三蔵なんて止めて俺にしねぇ?」
「悟浄…?」

しかし、恥ずかしくなったのか、雅は顔をうつむかせてしまう。そんな時、雅の背後に、見知った影が見えてくる。木に凭れ恰あたかも関係ないと言わんばかりのその影に向かってなのか、俯く雅に向かってなのか…悟浄は自分自身でも解らない状況の中で再度問いかけた。

「雅…俺じゃダメか?」
「……ッッ」
「ゼッテー泣かせねぇ、女遊びも止めるわ。三蔵に変わって守ってやる…」
「…悟浄……ありがとう…そぉ言ってくれて…」
「じゃぁ…」
「でも……本当に…ごめんなさい…」
「そんなに三蔵が良いの?」
「無愛想で…すぐバカとかガキとか…言われるし…三蔵には迷惑でしかないかもしれないけど…悟浄選んだ方が…良いかもしれないけど…私やっぱり…三蔵が好き……」
「不器用すぎて後悔しても、か?」
「ん……片想いでも良い…三蔵と一緒に居れるなら好きって伝えれなくても…それでも良い…」
「嫌われても?」
「……それはしんどい…かな…」

ふっと雅の表情に影が陰った。その次の瞬間、悟浄はクハっと笑いかけた。

「意地悪すぎたな…わり…」
「悟浄?」
「ネックレスの在りかはしらねぇけど…その想い、伝えても良いんじゃねぇの?」
「でも…」
「てか…ほら…」

そういい、体をくるりと反転させられた雅。そこまで太くもない木からは見慣れた背中が覗いていた。

「俺、先戻ってるわ」
「ちょっ…!悟浄…!」

肩にポンとエールを残し、その背中を追い越して、片手をヒラヒラと振りながら徐々に小さくなる背中を見ていた雅。しかし、足は動かない。
ただ、ドクドクと煩いだけの心臓の音がやけに耳に、体に伝わってくる。

「…ぁの……さ……んぞ…」

勇気を出して呼び掛けるも声は思っていた以上に小さく、震えていた。とても長い時間か、それとも悟浄が去って直なのか…それすらも解らない位の時、その背中は木から離れた。

「待って…!三蔵!」

その一言が届いたのだろう。ピタリと足は止まった。しかし、こちらに向くことはないまま、雅も言葉を探していた。
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