第9章 届かぬ思いと、繋がる絆
そう言われてズキズキと痛む心と、ネックレスが見つからなかった焦りで、悟空に引っ張られるまま、雅は宿に帰っていった。昼食、夕食と時間はいたずらに過ぎていく。夕食の後、こっそりと雅は部屋を抜け出した。と言っても皆まだ寝ている訳でもなく、目を盗んでと言った形で…
ライトを片手に、昼間の芝生の元にやって来る。宿からはそれ程離れてはいないため、すぐに着いた。そんな頃、四人は雅がこっそりと抜け出した事に気付いていた。
「雅…どうしたんだろうな…」
「昼間から様子がおかしかったですしねぇ…」
「まぁ……なぁ」
「おい、外で吸え」
「はぁ?」
「テメェの煙が不味くてかなわん」
「三蔵サマったら…相変わらず自分勝手なんだから」
「うるせぇよ、テメェの部屋は隣だろうが!クソ河童!!」
「クソは余計だろうがよ」
「ッチ……」
「三蔵も、いい加減にしてください?」
降参とでも言いたげにわざとらしく悟浄は両手を上げ、部屋を後にし、そのまま外に向かっていった。残された三人は、八戒の殺気立つ空気に悟空が身を潜めていた。
「いい加減にしてくれませんか…」
「何がだ」
「雅の…彼女の事が気になるなら素直になったらどうですか…」
「何言ってやがんだ、テメェまで…」
「何とでも言ってくれて構いませんがねぇ、悟浄に取られるかも知れないからってだけで、勝手にイライラするのをやめてくださいって言ってるんです。」
「イラついてンのは貴様だろうが」
「僕は前に言いましたよね!素直にならないと誰かに取られると!」
「うるせぇんだよ!」
「ちょっと…!八戒も三蔵も…やめろよ!」
「悟空は黙っていてください。」
「黙れ猿」
「…白竜ぅぅぅ」
「大体あなたは彼女の事を大事に思っていたって伝わりにくいんだから、ちゃんと態度で示さないと行けないじゃないですか!」
「勝手なこと抜かしてんじゃねぇぞ!」
「あぁもう!だったら悟浄に取られてしまえば良いんですよ!!!」
その八戒の一言で三蔵はグッと眉間にシワを寄せてドサリと椅子に座り、ふいっと顔を背けて袂からネックレスを取り出した。