第9章 届かぬ思いと、繋がる絆
飛び出したものの、行く宛もなく、ゆっくりとした時間を過ごしながらも少しある芝生の上に腰を下ろした雅。その心は少しばかりざわついていた。
「三蔵に会わないで…良かった…」
そうポツリと呟くと、胸元にかかるネックレスを外して握りしめた。
悟浄に好きだって言われた訳じゃない…
でも、落とすってことは好きってこと?
それか…何かのゲーム?
色々な思いが巡っていた。どう考えても、今まで見聞きして来た悟浄のタイプと自分はまるで違う。
「じゃぁなんで……」
訳も解らないまま、どうして良いかも解らないまま…雅は三蔵に貰ったネックレスチャームを太陽に透かして見ていた。そのときだ。
ドンッ!
「あ!ごめんなさい!」
「ごめんなさい!」
小さな子供が遊んでいた最中に、ぶつかってきたのだ。その時は雅も大丈夫だよと声をかけたものの、ふと気付いた次の瞬間だ。
「…嘘!」
手に持っていたはずのネックレスがなくなっていたのだ。
「嘘…やだ!!…どこ?!」
這いつくばって探し回ってみるもあるはずのネックレスの行方が解らない。ぶつかった時にどこかに落ちたのだと解っていても、それがない。
「やだ…せっかく三蔵がくれたのに…」
泣きそうな気持ちになってくる…頭の中には三蔵がくれた時に言っていた言葉がこだましていた。
『要らなきゃ捨てろ』
そして昨日、自分が酔い潰れた時に交わされていたとう悟浄の宣言と、今朝八戒に見られた状況…思っている事と違うとはいえ、全てが一直線に雅が悟浄を選んだ、ということに繋がりうることが続いている。
「どこ…?お願い…見つかって……」
しかし探せど全く見つからないネックレス。その時
出掛けていた悟空に声をかけられた。
「みーやび?!どうした?」
「えっ…あ、悟空…!」
「何々?探し物?」
「うん…ッッ」
手伝ってといえない状況がそこにはあった。悟空のすぐ後には今一番会いたくない三蔵人がいたのだ。
「何々?手伝おうか?」
「ごめん!大丈夫!」
急いで顔を反らしてしまった雅。まともに三蔵を直視できなかった。
「悟空、先行ってろ」
「え?何々?」
「二人で帰れってんだよ。」
「もぉー!三蔵こえー顔すんなよな!行こ?雅!」