第8章 交差する想い
「(う…るさい…落ち着け!心臓…)」
ドクドクと煩く響く心臓に相反してびくともしない悟浄の腕。
「あ…の。悟浄?」
「俺、雅の事マジでオトしにいくから」
「落とすって……ッ」
そんな時だった。突如ガチャリと戸が開いた。
「失礼しますね、悟浄、みや…びの……」
「あ、八戒」
「……お邪魔でしたか?」
「や、違うのそうじゃなくてね?」
すーっと扉がしまっていくのを見て、悟浄はゆっくりと腕を離した。
「俺としてはラッキーだったけど…」
「絶対誤解したよ!?八戒!!」
「どっちにしても、俺はマジだから。仮に…」
「仮に?」
「…いや、なんでもねー」
そう言うと、雅は『八戒に話してくる!』と言って部屋を後にした。残された悟浄はその場に座り込み、火をつける前のハイライトをただ咥えて天井を見上げた。
「だっせぇな…マジで落とすつもりなら三蔵にコクってたのもいっちまえば良かった…」
ポツリと呟く声は誰にも届くことはなかった…
その頃、隣の部屋では雅が八戒に話をしていた。
「…あの…昨日は迷惑かけてごめんなさい」
「いえ、勧めたのは僕でしたし。」
「でも調子にのって記憶なくなっちゃってて…」
「そうですか。」
「私、さっき悟浄に聞いたら変なことはしてないって言ってたけどほんと?」
「僕的にはしてないと思いますが…ねぇ?三蔵?」
「…どうだかな」
「やっぱり…私迷惑かけた?」
「酔っぱらいになれば誰だって多少は迷惑だろうが」
「……そか…ごめんね、三蔵にも迷惑かけて…」
「それより頭痛とか吐き気は?」
「それは特に…大丈夫」
「ならやっぱり飲める口ですねぇ。」
「飲むな」
「三蔵…!」
「飲み方が解る様になるまではバカみたいに飲むんじゃねぇ。」
「…ん、気を付ける。悟空と一緒にジュースにしとく。」
「…フン」
そう言うだけ言って三蔵は立ち上がり空になったマルボロのケースを握りつぶすと徐に外へ出ていった。その灰皿の様子を見て雅はポソッと呟いた。